「貸してくれるなら安心」
『その代わり返せよ?』
「解ってるって♪」
そう言って
また携帯画面に視線を戻す千紘
『……。』
人間何か1つの事に集中してしまうと
口数が減る
「……。」
携帯を見るのに夢中になり
一言も話さない千紘を横目で見つつ
雨音と車のエンジン音以外何も音がしない
沈黙が続く車内の中で俺はラジオを付ける
雨の量は増し
さっきに比べ
強くなってる気がする
『はぁ…』
俺の口から自然と溜め息が出る
雨の日に車を
運転するのは
あまり好きじゃない
何でかって?
視界が悪くなるから
対向車のライトが反射して
ガラスも見にくくなるし。
俺はワイパーの動く速度を
" 弱 " から " 強 " に上げる。
「なぁ新…」
『えっ?』
突然
口を開いた千紘に返事を返した俺は
たまたま赤信号で車を停車させ
隣に座る千紘に視線を向けた。


