父親が
突然血を流して
目の前で死んだ
あの時は
驚きと恐怖で
あたしの目から
涙が溢れ出した
『……。』
何度も言うけど
この涙は
悲しみとはまた違う涙
だってさ
体の穴全てから血を流して
人が苦しんで死んでいく姿
初めて見たけどさ
あの光景は
気持ち悪い
今
思い出しても
吐き気がする
人間じゃない
あれは化け物
目に焼き付いて
頭から離れない
それ程怖かった
「……。」
それ以上に
健太を失った事が
何よりも悲しくて
何よりも辛くて耐えられない
『…っく、けん…たぁ…』
鼻は完全に詰まり
あたしの涙は
止まる事なく
流れ続ける
「萌チャン…」
気付きたくなかった
人が死ぬ悲しみ
残された人の苦しみが
こんなにも辛いなんて
出来れば永遠に
知りたくなかった
結城に出会ってあたしは変わった
自分でも解る
あたしが一番
誰よりも一番
あたしを見て
あたしだけを
" あたしは特別 "
今までそれが口癖だった..
なのに
今じゃ
" あたしは特別 "
この言葉が大嫌いだ


