ドクン
ドク…
「萌、椅子から立つなって言っただろ?」
ゆっくり
ゆっくり
振り返る父親。
『ひ、ひァ…』
振り返った父親の顔を見た
あたしは思わず悲鳴を上げ
腰を抜かす。
目
口
鼻の穴
耳の穴
穴という穴から
真っ赤な血液が
ポタポタと流れ落ちている。
「萌、どうかしたか?」
あたしの
焦るそんな姿を見て
にっこりと笑う父親
「ほら、シチューはもう完成だよ。早く座りなさい」
『……。』
お父サンの料理でも絶対食べたくない
その思いから
隣に居る父親の
言葉を無視して
あたしは立ち上がり
出来上がったシチューを捨てようと鍋を掴み
鍋ごとシチューをシンクへ投げ捨てる。


