「そう、求め合う物。お互いに求める物、私達はそれが違い過ぎた…だから離れたのよ」



『……。』



「私が求めたのは家族がみんな揃って笑顔で笑い合える幸せな家庭だった。…けどあの人は違ったわ」



『…違った?』



「あの人が求めたのはお金と権力… 彼は優秀な医者だったの。贅沢なんて求めてないのにあたし達に贅沢をさしてやるからっていつも仕事ばかりで。家族を残して最終的に何ヶ月も連絡をよこさず彼は家にも帰って来なくなった」



『……。』



「私は彼の仕事を憎んだ。彼の仕事が大嫌いだった…最終的には連絡も繋がらない彼に対して毎日本当に仕事なのか疑う様になっていって… 彼自身が信じられなくなったのよ」



友梨サンは力なく微笑み
入れ立ての紅茶を俺に出してくれた。



「あの頃は私も若かった。寂しさのあまり、当時優しくしてくれた男の所に、子供を置いて出て行くなんてね…」



『子供…』



「男の子だった。丁度あなた位の年齢のね…」