俺が唯一愛した女



「何黙ってんだよ、なんとか言えや」



ニタニタ笑う月サンの笑みは異常で



月サンだけど月サンじゃない
そんな風にも思えた。



『そんなに居場所が欲しけりゃ俺に色々言う前に自分の力で奪い返してみろよ…』



「……。」



『吠えるのは赤ちゃんだって出来る。悔しかったら実力で奪い返せば?』



月サンは


掴んだ胸ぐらを離すと
トイレの床につばを吐く。



「クソガキが…」



俺を睨みつけた月サンはそれ以上何も言わず..
そのままトイレから出て行った。



『はぁ…』



月サン俺に対して相当イライラしてるな



自然とため息が出る



「シキサン居ますか?お客様がお待ちですよ」



トイレの


入り口のドア越しに
聞こえる従業員の声



『直ぐ行く』



色々考えてもキリないよな



俺は従業員に返事を返すと



両手で頬を叩いて気持ちを入れ替えて
客が待つテーブルに足を運ぶ事にした。