『よろしくお願いします』
いかにも偉そうな50代過ぎのオッサンに
頭を下げる俺。
面接当日
履歴書を渡した俺は
オッサンの質問に答える。
『……。』
何を話していたか
よく覚えていない。
1つ思い出せるのは
そこまで重要な
話ではない事だ
即答で答える俺にオッサンは
微笑み最後の質問をした
「何でうちを?…選んだ動機を教えてくれる?」
『… 何と無く』
この仕事を選んだ動機?
" この仕事が好き "
" 興味があって "
本来ここでは採用されたいが為に
思ってもない事を言うべき場所…
好印象を与える為の偽善の言葉
そこまでして
何の意味がある?
「……。」
大切な人を失って
夢も希望も未来すらない俺の場合
仕事なんてただ働ければ
ぶっちゃけどこでもいい
別にここじゃないと絶対
駄目だと言う事もないし
そんな俺に
偽善の言葉が浮かぶ訳がない
偽善の言葉なんて使いたくなかった。


