慈雨はやがて一軒の家の中に入った。


家は全体的に少し古くさい木造のつくりだが掲げられている看板だけはやけに真新しかった。



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┃ 陽海何でも相談所 ┃
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そう、彼女の勤めている場所であり住居だ。





カランコロン


「ただいま〜♪」


玄関のドアについている鈴が鳴り、家の住人に彼女の帰宅を知らせる。


慈雨はサンダルを脱ぎ揃え、皆が集まっているであろうリビングに足を向けた。

扉を開くとクーラーの効いた涼しげな空気が彼女の頬を撫でる。

熱い外のせいで火照った顔に冷たい風はとても気持ち良いが、同時に汗が冷えて体の体温が奪われていく。

思わず身震いした慈雨は、机に突っ伏しているこの家の主のもとに向かった。



「ただいま〜♪六(ロク)ちゃん帰ったよ?」


突っ伏していた男…狐之村六理は慈雨の帰宅に顔を勢いよく上げ、へらっと笑ったと思うと慈雨に抱きついた。


「おう、お帰り!」


小さな慈雨は長身の六理に包み込まれるように抱き締められる。