はぁーと手のひらに息を吹きかけ、両手を擦り合わせながら敷居に目を凝らす。
「ははぁ、これか」
敷居の奥まったところに、何かが詰まっているのが見えた。
大方、埃か砂の固まりだろう。
何か細い棒を取りに立ち上がったとき、ぼくは背後に自転車が止まる音を聞いた。
振り向くと、自転車はちょうど家の前に止まっていて、それに跨った、役場で働く永山さんという同年代の男性と目が合った。
「こんにちは」
どちらからともなく、ぼくらは挨拶を交わした。
「あの」
「はい」
「お父上かお母上は、ご在宅ですか」
永山さんに、笑顔はなかった。


