広田の興奮の理由は、見当がついた。
この10月、学徒兵の徴兵適齢が20歳から19歳に引き下げられ、つまり、ぼくたちもその対象となった。
大方、そのことが広田の気を荒立たせているのだろう。
とりわけ先日ぼくらの同級生のひとりが徴兵されたことがあまりに衝撃的で、もちろんぼくも例外ではなかった。
とうとう時局は、こんなところまで来た。
「俺たちだって、同じ目に合わないとは限らないぞ」
広田が小さく呟いた言葉に、ぼくは頷いた。
「わかってるよ」
そう答えたとき、ぼくの脳裏をよぎったのは、両親の顔と、きみの顔だった。
そこにいるきみは、泣いていた。


