桜花舞うとき、きみを想う



戦死公報が届いたあとで生存を知り流す涙と、公報もなく死んだと知らされ流す涙の意味は真逆だ。

ぼくら家に残された国民は、たった1枚の紙切れに、こんなにも一喜一憂させられる。



「赤紙は律儀に届けるくせにな」

いつもは人目を気にして批判的なことは口にしない広田が、珍しく不満をあらわにした。

「急に徴兵しておいて、いつまで経っても安否を知らせない。遺族の気持ちなんて知ったこっちゃないってか」

「おい、よせよ」

いつもとはまるで逆の立場で、ぼくは広田の言葉を遮った。

「なんだよ、中園。他でもない、お前の家のことじゃないか」

「そうだけど、少し声が大きすぎやしないか。誰かに聞かれでもしたらまずいだろう」

広田が戦局について議論をするのは日常茶飯事だったが、批判を声高に言うことはまずなかったから、ぼくは驚いた。

少し顔を紅潮させ鼻息を荒くした広田は、ぼくの忠告に憮然とした顔で黙り込んだ。

広田はずいぶん興奮しているようだった。