杉田さんが、丁寧に言葉を選びながら話した内容によると、兄が戦死したのはグアム島でのことだった。

ぼくはグアム島で戦闘があったことは知っていたが、そこに兄が派兵されているとは知らなかったし、考えたことがなかった。

ではどこにいると思っていたかと聞かれれば、どことも言えず、未だに兄が戦場にいるということ自体が半信半疑だったのだ。

一方で、現在知り得る限りの情報を把握し、ぼくとは違い戦争を現実のものと受け入れている広田は、

「グアムと言ったら、夏ではありませんか」

と絶句した。

その言葉に、杉田さんは軽く頷いた。

「その通りです。7月の終わり頃のことでした。わたしは戦闘が終わって復員するまでの間、ジャングルの中に散在する日本兵を探しまわりました」

杉田さんは、日本兵の遺体を見つけては、身元がわかる物を身につけていないか体をさぐり、見つけるとそれを自分の鞄に押し込んだ。

そして日本に帰還してからの日々を、遺品を届けるために日本全国をまわる旅に費やしていると打ち明けた。



「それは本当に、ご苦労さまでした」

母がゆっくりと杉田さんに頭を下げ、指先を目頭に当てた。