桜花舞うとき、きみを想う



翌日、ぼくはまた、いつも通り学校で経済の講義を受けていた。

広田が隣に座っていた。

教科書に向けられているぼくの視界の右端に、舟を漕ぐ広田が見え隠れして、ぼくは教授にわからないように小さく笑った。



広田は戦況の情報集めに熱心で、あれこれと新しい情報を仕入れてはぼくにも教えてくれた。

それはときに事実だったり、ときに偽物だったりした。

でもまるで戦争に関心のないぼくは、そんな広田がいなければ今の状況について知る術がないから、密かに頼りにしていた。



教壇では、爺さん教授が唾を飛ばしながら、日本の戦果について熱弁をふるっていた。

(ちっとも経済と関係ないじゃないか)

前方の席で教授の話に頬を紅潮させている生徒を見ながら、ぼくもいよいよ退屈になってきた。

彼らには、教授の唾がかからないのだろうか。

そんなことを考えているうちに、講義は終わった。