学徒出陣の対象年齢は20歳以上で、まだそれに満たないぼくらは除外のはずだ。
「ぼくらが召集されるのは、早くても来年の話だろう」
ぼくの言葉に広田は、いや、と首を振った。
「徴兵適齢が19に引き下げられるという噂だ」
「そんな馬鹿な…!」
思わず大きな声を出したぼくの口を広田が押さえた。
「シッ、誰かに聞かれたらまずい」
「悪い、つい」
大声を上げたくらいで、誰も敏感に反応したりはしない。
仮に問い詰められたとしても、いくらでも言い訳できることだ。
けれど、そうわかっていても気にしてしまうほど、世の中がおかしくなっていたことは確かだ。
ぼくは真偽を確かめるため、急いで帰路についた。


