猿だったきみは、みるみるうちに成長して、愛らしい女の子になった。
ぼくはきみのことをアヤちゃんと呼び、きみはぼくのことを礼ちゃんと呼んだ。
幼いアヤちゃんは、ぼくがせっせと竹を削って作った竹とんぼが好きで、
『礼ちゃん、今日も神社へ連れて行ってちょうだい』
と言っては、広い境内でふたり並んで、青い空をめがけて竹とんぼを飛ばした。
上手に飛ばないと、ぼくが羽の部分を小刀で削って調整して、また飛ばす。
どうしてもうまく出来ないと、きみはベソをかいた。
そんなとき、ぼくは決まってポケットからカルミンを取り出して、ひと粒あげた。
小さなぷくぷくの手に真っ白なカルミンを握らせてやると、きみはいつだって、泣いていたことを忘れて、パッと瞳を輝かせた。
『うまいかい』
『うん、薄荷おいしいね』
日が暮れると、ぼくはきみの手を取って、神社の長い石段を下りて帰った。


