桜花舞うとき、きみを想う



水族館には海豚のほかにももちろんいろんな海の生物が展示されていて、ぼくらは時間を忘れて、そのひとつひとつをじっくり観察した。

きみは小さな魚を見てはかわいいと言い、大きな魚を見ては顔が怖いとはしゃいでいた。

「この魚はうまそうだ」

なんて、ぼくが冗談交じりに言ったら、きみはぼくの背中を力いっぱい拳で殴った。



「わたし、こんなにたくさんの魚を一度に見たのは初めてよ」

「ぼくだってそうさ」

「日本には、どのくらいの水族館があるのかしら」

「さあね。きっとこれからどんどん増えるだろうね」

「いつか日本中の水族館に行きたいわ」

「行けるさ」

「本当?日本中よ。約束できる?」

ぼくが小指を出すと、きみは嬉しそうに微笑んで、細い小指を絡ませた。