実際のところ、きみの言葉はほとんど的を射ていたと言っていい。
例えて言うなら、ぼくらは筏に乗って海豚の海に放り出された漂流者だった。
こちらに泳いできたときに、しゃがんで手を伸ばせば届いてしまうほど近くに海豚は存在した。
水槽の中の魚とは明らかに違う迫力を持った姿に、ぼくは心底驚いた。
「そう、怖気づいているんじゃない。驚いているんだ」
「何か言った?」
「いいや、何でもないよ」
ぼくがそんな、どうでもいいことをうじうじ考えているそばで、
「水槽のお魚もかわいらしいけど、こうして伸び伸び泳いでいる姿を見られてうれしいわ」
と、きみは太陽の光が反射する水面を見つめ、眩しそうに目を細めた。
その視線の先で、海豚は本当に気持ち良さそうに、伸び伸びと泳いでいた。


