桜花舞うとき、きみを想う



「礼二さんどうしたの。かわいいわね」

たしかに、かわいかった。

少し面長で、正面から見ると笑っているようにすら見えた。

こんなに愛らしい顔をしているのに、どうして『海の豚』などと書くのだろう。

そんなことを考えていると、きみがまた言った。

「礼二さん、どうしたの」

「や、だってぼくは、てっきり水槽かなんかにいるものだと思っていたから」

こんなふうに触れられそうなほど間近に見られるとは、まったくの予想外だった。

しなやかに泳ぎ続ける海豚を見ていると、

「それで、海豚があまりに近くにいるものだから怖気づいているのね」

と少し上目遣いのきみに言われ、ぼくは頬が熱くなった。

「そんなわけないだろう。かわいいと思っているよ」

「ふふふ、そうかしら」