桜花舞うとき、きみを想う



聞くところによると、この水族館は日本で初めての半道海豚を飼育展示に挑戦している、珍しい施設とのことだった。

ぼくはそこで、生まれて初めて海豚を見た。



「わぁ、かわいい!ね、礼二さん、かわいらしいわね!」



海に板で仕切りを施しただけの、一見簡単そうに思える展示場に、海豚はいた。

その体は、予想以上に大きかった。

無邪気にはしゃぐきみとは正反対に、ぼくは初めて目の当たりにする灰色の海の生き物を前に、言葉を失っていた。



なんとも不思議だった。

鰻のようにぬめって見える肌質。

鮫のような形の巨大な魚が、優雅に泳いでいた。

海豚は、その大きさからは想像できないほど、しなやかだった。