「イルカ?」
「ああ。見たことないだろう、半道海豚」
「見られるところがあるの」
「近くに飼育展示している水族館があるらしいんだ。珍しいから見に行こう」
すると、忙しく手を動かしながらぼくらのやり取りを聞いていた仲居が、
「その水族館でしたら、すぐ隣の港ですよ」
と教えてくれた。
「隣なんですか。それならちょうどいいや」
水族館のことは、父に教えてもらった。
この旅館を取ってくれたのも父だったし、まったく何から何まで世話になりっぱなしだった。
都会から外れているとはいえ、あまり遠出しないようにとの配慮をしてくれたのかもしれない。
父は陽気で気楽に見えて、ちゃんとぼくらのことを考えてくれていた。


