桜花舞うとき、きみを想う



翌朝。

客室の障子を開けると、眩しい朝日に照らされて輝く海の向こうに、小さく富士が見えた。

明け方まで降り続いていた雨が、嘘のようにあがっていた。



朝風呂を堪能して客室に戻ると、初日と同じ仲居の女性が朝食の膳を準備しているところだった。

「まぁ、本当に良かったこと。こんなにくっきり富士が見えるのは珍しいですよ」

起きるなり窓の外の景色に釘付けになっていたきみは、それを聞いてますます嬉しそうな笑顔を見せた。

「いい1日になりそうだわ。ね、礼二さん」

「そうだね」

「今日はどこかへお出かけなさいますか」

仲居の問いに、ぼくが腕を組んで、

「そうですね、海豚でも見に行こうかと考えています」

と答えると、きみが首を傾げた。