桜花舞うとき、きみを想う



今日、晴れて出撃の日を迎へます。
今朝早く、一寸散歩へ出ました。足元に名も知らぬ花が咲いてゐました。押花にしてあなたに送ろうかと考へたが、花の命を思ひやめました。
空には白い雲が浮かび、遠くから夏を告げる黒鶫の声が聞こへます。
今迄気に留めなかつた、あらゆる自然が美しい。
出撃を前に、僕の心は何処までも平穏です。

今僕の前に、あなたが送つてくれた写真があります。あなたは朗らかに笑つてゐますね。僕もあなたを思ひ、笑つて征きます。

言ふことは沢山あるが、考へれば其の殆どが此の一言に尽きると知りました。
此迄の数々のご親切、ありがたうござゐました。

直接別れを言ふことが叶はぬのは心が残ります。けれど悲しまないでください。僕はあなたの笑顔に見守られ幸せなのですから。
あなたは今後、僕のことは夢か幻くらいに思ひ、僕が居ない現実の、あなたの未来をまつすぐ生きてください。必ず新しい家族を持つてください。

天国で會へる日迄、何時もあなたの幸を願つてゐます。
お体大切に。家のことを頼みます。
只ひとつ願ふこと、年に一度、僕の命日にカルミンを一緒に食べて笑いませう。

散りゆく花の如く大海原を舞い降りる、桜花より此の言葉を贈ります。



永へに君を愛す





昭20.6.22
鹿屋基地にて

アヤ子へ
愛しいアヤちやん!さやうなら!

中園礼二