翌朝、ぼくがまだ暗いうちに起きると、すでに夫人が起床していて、朝飯をこしらえてくれていた。
「たいしたものは出来なくて、ごめんなさいね」
申し訳なさそうに笑う夫人に、ぼくはお願いをした。
「奥さん、今朝はぼくと一緒に食べてくれませんか」
夫人は、すぐにぼくの思いを察してくれた。
静かな朝、少しずつ明るくなる居間で、ぼくと夫人は、何を話すでもなく、米と味噌汁と、沢庵を食べた。
「しっかりね」
夫人は、ただひと言、小さく言った。
「はい。お母さん」
ぼくも短く答えた。
食べ終えると、ぼくは夫人の膝に顔を埋め、声を殺して泣いた。
「お母さんは、離れていても、いつもあなたと一緒ですからね」
夫人は、泣きながらぼくの頭を撫でて、最後に懐かしい母の顔で微笑んでくれた。


