この夜、ぼくはすっかり清水家の一員となり、楽しい一家団欒を過ごした。
巡洋艦が沈没した後、もしもこの家に世話にならず、あのまま病院で治療を受けて軍隊に復帰していたら、ぼくはもっと荒んだ気持ちでいただろう。
思えば、頑固な清水さん、凛とした夫人や物怖じしない素子さんは、どこか家族に似ていて、それがぼくをこんなにもくつろがせてくれたのかもしれない。
それに、忘れてはいけない、カズの愛らしさも。
すぐに泣くくせに、それでもご機嫌を取ってやるとケロリと笑うところなんて、幼い頃のきみに瓜二つで、そんなカズはぼくの心を何よりも癒してくれた。
やがて食事が済み、談笑も落ち着きを見せた頃合いを見計らって、清水さんが立ち上がった。
「わたしは基地へ戻るが、きみは今夜はここでゆっくり過ごしなさい。また明日の朝、会おう」
家を出る清水さんを見送ると、ぼくらは居間に戻り、しばしの休息の時間を過ごした。
けれど、誰も話し出すきっかけを掴むことができず、なんと、大人たちの事情など知る由もないであろうカズまでもが、居心地が悪そうにそわそわしていた。
どことなく、普段とは違った雰囲気を感じ取っていたに違いない。
そんな様子を見兼ねてか、素子さんが台所へ消えたと思ったら、
「ねえ、久しぶりにお会いできたんだもの、少しわたしの部屋でお話しましょうよ」
ふたつの湯呑みと急須を乗せた盆を手に、戻って来た。


