桜花舞うとき、きみを想う



「今夜、うちへ来なさい」

清水さんの誘いがあったのは、出撃前日のことだった。

「送別会が終わってからで構わない。妻が珍しく鶏肉を手に入れてね、すき焼きをするから、ぜひ礼二くんもと言っている」

「ありがとうございます。ぜひご一緒させてください」

帰省が許されなかったぼくへの、せめてもの労りだろうか、ぼくはもともと送別会に参加するつもりはなかったから、その旨を告げ、夕食前に清水さんと共に兵舎を出た。

出迎えてくれたのは素子さんとカズで、夫人は台所で忙しく準備をしているとのことで、玄関にはいなかった。

「やあカズ、少し大きくなったんじゃないか」

満面の笑みで飛び付いてきたカズの頭をぐりぐりと撫でてやると、カズはくすぐったそうに笑った。

素子さんは神妙な表情で、

「お久しぶりね」

と言ったが、なぜか奇妙なほどすっきりした気分のぼくは、努めて明るい口調で、

「素子さん、奉仕活動で基地にもいらっしゃると言っていたのに、全然来ないじゃない。真面目に活動しているんですか」

などとからかってみせた。