桜花舞うとき、きみを想う



「自分は、もう妻や両親には会えないのでしょうか」

「すまない、わたしの力不足で、本当に申し訳ないと思っている」

頭を下げたまま何度も謝る清水さんの声は震えていて、ぼくは興奮を抑えきれなくなった。

「でも……!そんなのってあんまりじゃないですか!会えないなんて、別れも言えないなんて…っ!」

「中園」

「だって皆言ってたんですよ、出撃の前には休暇がもらえて、家族に会えるから、その休暇をもらっていない中園はまだ先だって!」

「落ち着きなさい」

ぼくは清水さんの制止も耳に入らないほど、頭に血が上っていた。

「妻が待っているんです!夏に、とびっきりの西瓜を買ってやる約束をしているし、両親にだって……」

清水さんが、取り乱すぼくの体を強く抱き締めた。

「悪かった、俺がお前のことを筋がいいと言ったりしたから、こんなことに」

ぼくは清水さんの大きな体にしがみ付き、泣いた。