ああ、今まで何人の仲間がこの瞬間を味わったのだろう。
ここで志願すると言ってしまったら終わりなのだとわかっていて、それでも、言わずにこの部屋を出ることは許されない。
何とか自分だけでも、自分ひとりくらい志願しなくとも。
先に逝ってしまった永山さんも、そう思ったろうか。
少佐の手は怒りのあまり震え、それを見るぼくの背中を、じっとりとした汗が濡らした。
「貴様ぁ!死ぬのが怖いのか!」
少佐の怒号が飛んだ。
びくりと肩を震わせたぼくに、さらに畳み掛ける。
「国や家族を、命を懸けで守ろうとは思わんのか!」
「思いますっ!」
「それならば、なぜ志願しないのだ!」
「はいっ、志願します!」


