桜花舞うとき、きみを想う



令状を受け取ってから出征まで、写真を撮る時間などいくらでもあった。

けれど、そういうことにまで頭が回らなかったのだ。

休暇で帰省できると思っていたし、会えないことがこんなにも寂しいなんて思ってもみなかった。

「まさかこれほど長い間会えないとは、といったところか」

清水さんが、見事にぼくの心情を言い当てた。

「その通りです。戦場へ行くのだから、その前にすべきことはしておかなければならなかったのに、浅はかでした」

とはいえ、今日まで自分が辿ってきた道は、事前にどれほど想像を巡らしたとて到底考えつかないものであったろう。

「自分は……」

普段とは違う、夜の空気に飲まれたのだろうか、ぼくは気持ちが昂り、我慢がきかなくなった。

たとえ罵倒されてもいい、軍人らしからぬと殴られてもいい。

話すなら、今だと思った。

「自分は、新兵訓練のときに訓練場にやって来た少尉どのに命じられ、巡洋艦の乗組員となりました。自分が料亭の跡継ぎであることから、飯炊き要員で指名されたことでした」

隣で頷く清水さんの気配を感じ、ぼくは続けた。