桜花舞うとき、きみを想う



いつかの手紙に同封されていた家族写真。

せめて夢の中でもいいから家族に会いたいと思い、枕の下に忍ばせていたものだ。

暗闇では写っている人物の表情まで読み取れず、ぼくは起き上がり兵舎の外へ出た。



その夜は空が雲に覆われていて、月明かりがなく、頼りになるのは兵舎の玄関で申し訳なさそうにほのかに光る電球のみだった。

ぼくは灯りの下に座り、写真を見た。

中央のきみを囲むように、両脇にぼくときみの両親が立っている。

皆、楽しげに笑っていた。

「普通こういうのって、もっと真面目な顔で撮るよなあ」

誰にともなく、呟いた。

すると、

「いい笑顔じゃないか」

突然の声に、ぼくはびくりと肩を震わせた。