「前を向くんだ。事故のことはもう忘れて、今はこの戦局を皆で協力して乗り切ることだけを考えろ」
清水さんの力強い言葉も、ぼくの耳には入ってこなかった。
(宮崎さん……!)
敵艦の攻撃に体を震わせたぼくを励まし、支えてくれた腕の感触は、今でも残っている。
礼も言えないまま、記録を取りに出ると走って行ったあの後姿が最後だったなんんて。
磯貝さんだって、俺は生きると言っていたのに。
一人前になって、絶対に見返してやろうと思っていたのに。
ぼくは、ぎゅっと拳を握り締めた。
「気持ちは察するが、まだ話したいことがある。落ち着いたら頃に戻るから、少し頭を冷やすといいだろう」
清水さんは、ぼくに時間を与えてくれたのか、それとも別件の仕事があったのか、部屋を出て行った。
戻るまでの数分間、ぼくは一度も顔を上げることなく、もう会えない人々を想った。
ありがとうございました、と何度も呟いて。


