桜花舞うとき、きみを想う



それから清水さんは、腕を組んだまま下を向いて考え込み、時折顔を上げてぼくの顔を見ては、小さく息を吐いた。

ぼくはどうしたらいいのかわからず、けれど退室できる雰囲気でもなかったので、黙りこくって座り続けるしかなかった。



やがて、訓練の休憩時間に入ったのだろう、窓の外に仲間たちの姿が見えた。

皆、戦闘訓練をしているとは思えないほど楽しげな表情を浮かべている。

ぼくはそんな彼らの姿を眺めていた。

するとその視線に気付いたらしい清水さんが、窓の外へ顔を向け、眩しそうに目を細めた。

「俺の前では見せない顔だ」

その独り言のような小さな呟きは、我が子との縮まらない距離に悩む父親のそれのようで、妙にぼくの胸に突き刺さった。

その穏やかな表情こそ、厳格に振舞っている家の中では決して見せることがない、慈愛に満ちた顔だった。

ぼくはその顔に、部下思いだった上官の宮崎さんを重ね、思い切って聞いてみることにした。

「突然ですが、お伺いしたいことがあります。ぼくが乗っていた巡洋艦の人たちは、どうなったのでしょうか」

穏やかだった清水さんの顔が、微かに引きつった。