桜花舞うとき、きみを想う



清水さんが乗せてくれるといったのは、普段は練習機として使われている零戦だった。

実際に乗る前に、簡単な説明を受けた。

ふつうは単座式の零戦だが、練習機は複座式になっていて、ぼくは本来教官が乗るはずの後部座席にただ座っていればいいとのことで、

「空の上から見る鹿児島湾は格別だ。束の間の休息と思って、楽しむといい」

前席で操縦するという清水さんから、ありがたいお言葉をいただいた。



早速ふたり並んで外へ出ると、風が熱を帯びているのを感じた。

「もう夏なのですね」

「そうだな。月日が経つのは早いものだ」

飛行場へ向かう道の芝生も、緑が濃くなっていた。

「今から、あれに乗る」

清水さんが指す方に、1機の零戦が佇んでいた。

穏やかな自然の中に突如姿を現した鉄の塊は、ぼくの想像よりもずっと巨大だった。