(料亭……長曽野……そういうことだったのか)
ながその。
これで、謎が解けた。
長曽野と中園、よく似た発音のふたりが、入れ替わってしまったのだ。
主計兵を探していた村井少尉は、ぼくがいた演習場の軍曹に、料亭の跡継ぎがいることを口伝えで聞き、それを聞き違えたというところだろう。
「たしかそこにも僕らくらいの息子さんがいて、令状を届けたよ」
「へえ、そう……。その人は、今どうしているの」
「いやぼくも、さすがにそこまでは。でもなぜ急にそんなことを?その料亭が何か?」
「いや、ただ、故郷に帰ったら、奮発してそういうところに家族で行くのもいいかなんて思ったものだから」
ぼくの言葉に、永山さんは渇いた笑いを返した。
「そうだね、故郷に帰るなんてことがあればの話だけど」
その目は、笑っていなかった。


