桜花舞うとき、きみを想う



やがて夜になり清水さんが帰宅すると、夕飯の卓を囲みながら、話題は当然のようにぼくの話になった。

「そうか、素子には言っていなかったな」

別段申し訳なさそうな言い方ではなかったが、清水さんは秘密にしていたわけではないと強調した。

素子さんは、黙々と箸を動かしていた。

自分だけが知らなかったことが余程気に入らなかったのか、なかなか機嫌を直してはくれなかった。



「航空部隊に編入する話はついているから、週末に荷物をまとめて、月曜日の朝わたしと一緒に出られるようにしておきなさい。その日からは基地の兵舎で寝泊りすることになるが、大丈夫だね」

清水さんが告げた日程は、素子さんの予想通りの月曜日だった。

「何から何までお世話になりっぱなしで、申し訳ありません」

「いや、こちらとしてもひとりでも人員が増えるのは助かるよ」

「でも寂しくなるわ。素子や和生とも仲良くしていただいたもの、残念ねえ」

「時間が空いたら、お邪魔させてもらいます」

ぼくと清水夫妻の会話を、素子さんとカズは、黙って聞いていた。