桜花舞うとき、きみを想う



「それにしても礼二さん、こんなに元気になったってことは、もう軍隊に戻ってしまうのかしら」

素子さんの質問に、ぼくは先日の散歩でのことを話した。

素子さんはそのときのことを家族から聞かされていなかったようで、大変驚いた顔をした。

「それじゃ礼二さん、パイロットになるの」

「まさか。予科練を出たわけでもあるまいし、それに何の知識もないぼくが、なれるもんか」

ぼくは一笑に付した。

「だけど、父が乗れと言っているんでしょう」

「それは、せっかくここに来たのだから記念に乗せてやろうくらいのことでしょう。ぼくに操縦させようってんじゃないさ」

「そうかしら」

「そうとも」

「それならいいけど……」

素子さんは浮かない顔で、なお納得いかない様子だった。

ぼくと素子さんの間に、妙に気まずい空気が流れたとき、背後から元気な声が聞こえた。