やがて体が回復に向かうと、ぼくは日中暇をもてあましているカズくんと手を繋いで、庭の散歩を楽しんだ。
ぼくは次男で末っ子だから、こうして小さな手を握ると、まるで弟ができた気分になり、心が弾むのを感じた。
素子さんが家を出る時間と散歩が重なると、
「お姉ちゃん、いってらっしゃい!」
と元気に叫び、素子さんはそんな彼に目を細め、
「いってきます。礼二さん、和生をよろしくお願いします」
丁寧に頭を下げるのだった。
完全に打ち解けたぼくらは、互いを、「カズ」「礼ちゃん」と呼び合った。
礼ちゃんと呼びたいと言ったのは、カズのほうだった。
ぼくは最初戸惑ったが、子供相手に屁理屈をこねても仕方ないから了承した。
けれどやはり、まだ声変わりをしていないカズの口から「礼ちゃん」という言葉が飛び出すだび、ぼくはきみを思い出さずにはいられず、会えない寂しさで胸が苦しくなった。
そして同時に、ぼくを慕うこの小さな手を、離したくないと思った。


