「ここは一体、どなたのお宅なのでしょう」
ぼくは訊ねた。
「どなたのって、今申し上げたでしょう。わたくしの主人が引き取って来たのですから、わたくしどもの家です」
「その……ご主人というのは……」
少しずつ感覚を取り戻していく視界に映った夫人は、母と同じくらいの年恰好をしていた。
「主人は、海軍でパイロットの指導をしています。怪我で入院していた練習生を見舞ったとき、あなたのことを医師の方に聞いて、面倒をみることにしたそうですよ」
「そうでしたか。それは、とんだご厄介を……」
ふたたび体を起こそうとしたぼくを、夫人が手で制した。
「そんなことは気にされなくとも大丈夫ですから、今日のところは、このままもう少しお休みになるといいわ」
言いながら立ち上がり、去ろうとする夫人の背中に、ぼくは言った。
「もうひとつ、聞かせてください」
「何かしら」
「沈没した巡洋艦の、自分以外の乗組員は、その病院に収容されているのでしょうか」


