布団は、太陽の匂いがした。
(こんなに柔らかい布団で眠るのは、どれだけぶりだろうか)
頭がぼんやりしていたが、鼻から入り込む田舎の匂いに、ぼくは言い得ぬ心地よさを感じていた。
だが、そんな夢心地も長くは続かなかった。
思考が定まるにつれ、巡洋艦での出来事が少しずつよみがえった。
(……!)
そうだった。
磯貝さんに首を締め上げられていたぼくは、その豪腕によって艦外に放り出されたはずだ。
真っ青な視界は、全身を打ち付けるような痛みと同時に暗くなった。
その瞬間、いつか水族館できみと見た、あの海豚を思い出した。
あんなふうに泳げたら、と思った。
その後の記憶は、ない。


