「くっ……はなし…て…」
声にならない声で抵抗を試みても、磯貝さんの腕力に敵うはずがない。
このとき、ぼくの頭には、
『磯貝に気をつけろ』
という宮崎さんの声が何度もこだましていた。
「お前と同室の奴が見てたんだよ。夜中に部屋を抜け出して、戻って来てもずっと寝ないで、考え事してたみたいだって」
(くるし……い……)
ぼくはもう、声を発することができなかった。
「欲望に負けて菓子を探しに行ったんだろ?それで宮崎に見つかって、おれのせいにしたはいいが今後が不安で眠れなかったんだろ?お前以外に心当たりがねーんだよ!」
「ぐわぁっ……!」
ぼくの首を絞める磯貝さんの手に、いっそう力が入った。
あまりの苦しさに、ぼくはだんだん意識が遠のくのを感じた。


