「では自分は戻ります。戦闘が終わったら迎えに来ますから、ここにいてください」
磯貝さんは息を切らしながら、頷いた。
もう一度、では、と頭を下げ、ぼくは磯貝さんに背を向けた。
すると、いろんな物音に混ざって、磯貝さんが何か言った。
聞き取れなかったので反射的に振り向くと、その瞬間、ぼくは再び宙に浮いた。
「ぐぁっ」
一瞬何が起こったかわからなかったが、すぐに状況を把握した。
ぼくはさっき首根っこを掴まれた同じ手で、今度は正面から喉を掴まれていた。
「だからお人よしだって言ったんだよ」
今度ははっきり聞き取れた。
腹の底から絞り出された、低い声だった。


