桜花舞うとき、きみを想う



磯貝さんの顔のガーゼが赤く染まっていた。

「傷が開いています。手当てをしないといけませんね」

ぼくが言うと、磯貝さんは笑った。

「お前って、ほんとお人よしだよな」

ぼくのことを馬鹿にしたような言い方が気に食わなかったから無視したが、磯貝さんは続けた。

「それとも、せめてもの償いってことか?」

「何の……償いですか」

こういうときこそ、冷静にならねば。

挑発に乗って下手なことを口にすれば、今度こそ命がないだろうと思った。

(その前に、この艦が沈むかもしれないけどな)

自嘲気味に笑ったぼくを、磯貝さんが目ざとく見つけた。

「何笑ってんだよ。図星か」

顔のガーゼが、どんどん赤く染まった。