桜花舞うとき、きみを想う



もくもくと立ち上る煙は黒く、さっきまでの白煙とは違う匂いがした。

(爆発するかもしれない……!)

口元を袖で覆いながら戻ってみると、磯貝さんはさっきの場所でそのまま立っていた。



「磯貝さん、こっちです!」

いくら呼んでも反応がなく、ぼくは無理矢理磯貝さんの腕を取った。

「やめろ!おれはどうせ……」

「そういうことは、まったく動けなくなってから言ってください!」

ぼくは無我夢中で、どこから湧いてきたのか知れない数え切れないほどの兵に交ざり、黒煙を潜り抜けた。



烹炊所に戻ろうと思ったが、流されるまま逃げるうちに、自分が今どこにいるのかわからなくなった。

煙はだいぶ薄れていたから、ぼくは人が少ない場所を探し、磯貝さんを座らせた。

磯貝さんは肩を大きく揺らし、苦しそうだった。