ぱっと手を離されたぼくは、そのまま床に落ちて尻餅をつき、喉をおさえながら何度か咳をした。
磯貝さんが、そんなぼくを見下ろし、
「中園、米なんかよりも救命艇を出せよ」
と脅すように言った。
「救命艇?」
「おれみたいな負傷者は戦えないんだから、早く逃げないと。こんな巡洋艦と命運を共にするなんてごめんだからな」
「今は無理です。そんなことをしている余裕がありません」
爆撃音はますます激しくなり、ぼくらはほとんど絶叫に近い声で言葉を交わした。
「そんなこと?」
磯貝さんの顔色が変わった。
「戦闘員の方のための食料確保が最優先と言われていますから」
「そんなことって何だ?お前、おれがどうしてこんな目に遭ったと思ってんだ」
船の揺れのせいでなかなか立ち上がれないぼくに、じりじりと磯貝さんが詰め寄った。


