「磯貝、お前、何でそこまでひどいことに。何やらかしたんだよ」
どこからか声がした。
磯貝さんは、顔を動かすことも億劫だと言わんばかりに、ぼくのほうを向いたまま答えた。
「さあな。でも前々から、おれのことを悪者にしたくて仕方ない奴らがいたようだから、その術中に嵌ったってことだろう」
まるで自分に向けて言われているような気がしたぼくは、黙って首を横に振った。
すると、磯貝さんの目が少し優しくなり、
「べつに中園のことじゃねえよ」
と呟いた。
宮崎さんが話してくれたことが事実ならば、磯貝さんに自らの悪行を思い知らせてやりたいという思いこそあれど、『悪者にしたい』という表現では違和感がある。
磯貝さんを取り囲む面々の中に、不自然に顔を背けた人が数人いることに、ぼくは気付いていた。
きっと彼らこそ、磯貝さんにそそのかされ、悪事に手を出してしまった張本人であり、何らかの処罰を希望していた人々に違いなかった。
磯貝さんのこの姿を目にして、やりすぎだと思ったか、それとも喜んでいるのか、ぼくの場所から彼らの表情を読み取ることはできなかった。


