桜花舞うとき、きみを想う



動くミイラのような磯貝さんは、のそりのそりと、少しずつしかし確実に、ぼくのほうへ歩み寄った。

「お前が、しごきがどんなものかわからねえって言ってたから、身をもって教えてやろうと思ってよ」

「寝ていたほうが、いいのではありませんか」

「そう思うだろ。でもさ、寝てても痛いんだよ。笑っちゃうよ。ただ寝転んでるだけなのに、ほんのちょっとでも動いたら痛むんだぜ」

笑っちゃうと言う磯貝さんが、ガーゼの下で本当に笑っていたのか、ぼくには判断できなかった。



宮崎さんは、今週しごきを受けた主計科の兵は13人だと言った。

でも彼らは、しごきを受けたという翌日も、痛そうに顔を歪めがならも普通に働いていた。

それに決定的に違うのは、彼らは磯貝さんほど傷を負っていなかったということだ。

顔や体などの、他人に見える範囲に痣があったり、治療を受けていた人を、ぼくは見たことがなかった。

だからこそ、しごきの存在は知っていても、それがどの程度の罰なのか、わからないと磯貝さんに言ったのだ。

(こんなにあからさまに……)

これが、宮崎さんの言う『対処』だった。