桜花舞うとき、きみを想う



何ともいえない、居心地の悪さ。

磯貝さんが今どうなっているのか、知っていると言えば知っているし、知らないと言えば知らない。

あくまでも推測の域を出ないぼくの考えは、それでも大方、当たっているのだろう。



烹炊所では、数人の仲間たちがすでに昼食の下ごしらえに入っていた。

ぼくも慌てて加わり、芋を手に取った。

そのとき、初日に繊細な手つきで芋の芽を取ってみせてくれた磯貝さんを思い出した。

ぼくも今では、負うまく包丁の刃元を使えるようになった。

磯貝さんが好意的に世話を焼いてくれたおかげで、包丁の握り方さえわからなかったぼくが、ここまでできるようになったのだ。

そういう思いが頭を駆け巡り、今回自分がしてしまったことは、何と言う裏切り行為だろうと、ぼくは泣きたい気持ちになった。

鼻がツンとなるのを感じながら、それでも手を休めることなく動かしていると、烹炊所の一角が騒がしくなった。

声につられて視線を向けた。

視線の先、烹炊所の入り口に、仁王立ちしている人がいた。