ざわつく輪の中心にいたのは、さっきぼくに、磯貝さんの様子を見て来いと言った先輩兵だった。
「その線で間違いなさそうだ」
「そんな、でもどうして」
「また誰かが訴えたんだろ」
会話の内容から察すると、どうやら磯貝さんのことを話しているようだった。
(ここは関わらないほうがよさそうだ)
ぼくは輪に加わろうとしている二等兵の横を通り過ぎ、烹炊所へ続く通路へ出た。
そこへ、
「中園、お前は磯貝のこと、何か知らないか」
先輩兵の声が追いかけて来た。
ぼくは当然気が進まなかったが、渋々振り返り、
「自分は、今朝主計長が仰っていた、体調不良ということしか知りません」
と答え踵を返したが、きっと頬が不自然に引きつっていたと思う。


