桜花舞うとき、きみを想う



(間違いない。磯貝さんは夜中のうちに……)

そう思っていると、背後から突然声を掛けられた。

「中園、手が空いたら磯貝の様子、見て来いよ」

声の主は磯貝さんと同室の先輩兵だった。

「え、あの……」

(様子を見に行くなんて、冗談じゃない)

ただでさえ顔を合わせにくいというのに、わざわざ会いになど行けるはずがなかった。

「お前、磯貝と仲良かったろ。お前の顔見たら元気出るかもしれん」

ぼくの心中など知る由もない先輩兵は、呑気にそんなことを言った。

「でも自分は、まだ当分やることがありますから」

ぼくは早口に言うと、小走りでその場を離れた。

心臓の鼓動はどんどん大きくなっていった。

磯貝さんは、どうなってしまったのだろう。