桜花舞うとき、きみを想う



自らも別の木箱に腰を下ろした宮崎さんに続き、ぼくも座ると、宮崎さんは唐突に切り出した。

「いい機会だ。ちょっと中園に聞きたいことがある」

「何でしょうか」

「磯貝のことだ」

そう聞いたとき、先日聞いた、磯貝には気をつけろという言葉が頭をよぎった。

「磯貝さんが、何か」

「おまえ、今週だけで何人の主計兵がしごきを受けたか、知っているか」

「え……2人くらい、でしょうか」

「13人だ」

ぼくらしかいない部屋で、宮崎さんは声を潜めた。

正直、13人というのが多いのか少ないのか、ぼくにはピンとこなかった。

けれど、いくら厳しい軍隊生活とはいえ、誰もがしごきの辛さを知っているというのに、そんなにたやすく罰を受けるような行動をするだろうか。

そう考えると、やはり1週間で、しかも主計兵のみで13人というのは異常とも思えた。