「入れ」
宮崎さんは周囲に人影がないことを確かめると、医務室の隣にある小さな扉を開け、ぼくを素早くそこへ押し込んだ。
ここに閉じ込められるのかと一瞬思ったが、後から宮崎さんも入り、部屋の明かりをつけた。
その部屋はとても狭く、食料保管庫の木箱よりもいくぶん小さな箱がところ狭しと並んでいた。
そして、ほのかに甘い香りがした。
「ここが、おまえが探していた部屋だ」
宮崎さんの声は、さっきまでよりも少し柔らかくなっていたが、表情は硬いままだった。
ぼくは扉の近くに突っ立ったまま、やはり何も言えず、けれど漂う甘い香りを吸い込みながら体に力が満ちてゆくのを感じていた。
「ちょっと待ってろ」
宮崎さんが箱をひとつずつ開けて、中身を確かめていた。
その中のひとつに、ブリキ缶が入っているのが見えた。
たぶんミルクキャラメルだろうと思った途端、口の中に唾液が満ちた。


