桜花舞うとき、きみを想う



海軍には、特有の新兵教育があり、それは「しごき」と呼ばれていた。

生活のたるみ、訓練の失敗はもちろん、先輩兵の機嫌が悪いときにうっかり粗相してしまえば、それがどんなに小さなことであっても、しごきがぼくらを襲う。

ぼくはまだその現場を見たことがなかったが、殴る蹴るはもちろん、硬い木の棒で尻を容赦なく叩かれたりするらしく、もはや教育ではなく拷問だと磯貝さんは言っていた。

誰だって、できることならばそんな目には遭わずに任務を終えたい。

けれど深夜に食料庫に忍び込むなど、自らしごきを希望しているも同然だった。

ぼくは想像するだけで体が震えてしまった。



ぼくは初めて聞いた宮崎さんの怒声に萎縮してしまい、説明しようにも口が回らなくなってしまった。

そんなぼくを見て、宮崎さんは深いため息を吐いた。

「中園を信じていないわけではない。むしろ信じたいと思っているんだ。だから、何をしていたのか、正直に話しなさい」

主計長である宮崎さんには、もちろん食料の点検に来たなどという言い訳は通用しない。

こうなった以上、素直に話すしかなさそうだった。

しごき覚悟で。